アタシが読んだ本のことなどをさらさらと……



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九つの、物語
九つの、物語
九つの、物語
橋本 紡

主な登場人物は、ゆきなという大学生とその恋人の香月クン、それと彼女の兄の幽霊。
本人が気づかないうちに壊れていた心を取り戻すような話。
といえば、ちょっと憂鬱そうなイメージだけど、ぜんぜん。
この小説全体に漂うのは、ほんわかと優しいゆったりとした印象。

一人暮らしのゆきなの前に突然現れた死んだはずの兄。
この兄のキャラクターが結構素敵。
いい加減で女たらしでとても優しい。
そんな兄との平和で楽しい、だけどごく普通の生活が、すごくいい感じに描かれている。
小説が好きだった兄の部屋にある膨大な蔵書の中から、彼女が読む有名な文芸作品とリンクしてこの小説のお話が進んでいく。

優しくて痛くて切ない印象に残っているのが、彼女が兄の手からモノを食べるところ。
自らの中で抹殺していた記憶が、母の手紙によってよみがえり、どこか壊れている自分に気づくゆきな。
それから彼女は、パタリとモノが食べられなくなる。
たった一つ。兄が作ったものを兄が口に運んでくれるときを除いて。
雛が親鳥からエサを与えられる映像が浮かぶような場面。

とはいえこの小説、特別なことは何も起こらない。
まぁ、この兄の存在とその関係でたまに出てくるほかの幽霊を除いてだけど。
本当に普通の兄と妹の話で、誰もが感じる生きにくさとか他人との距離感とか、ごく普通の話。
非常に柔らかい雰囲気で最後までさらさらと読めてしまう。
そのくせ、読んだ後になにか心に残るようなこの感じは、この作者ならではなんじゃないかな。

どうでもいいけど「山椒大夫」の結末が2種類あるだなんて知らなかった。
これもそうだけど、この小説の中で引用されているいわゆる文学作品。
もう一度読み直してみようかという気持ちに今なっている。
とても単純なアタシ。

あ。単純といえば。
ここに出てくる幽霊である兄は、とても料理が上手という設定。
お話の中でも、いろいろととてもおいしそうな料理を作る。
ということで、読みながらすごく作ってみたい気持ちになった。
パエリアとかも簡単そうだったけど、やっぱり兄が妹に伝授したトマトのスパゲティかな。
分量なんか量っちゃダメ。
スパイスが効きすぎても効かなすぎても、それなりにおいしい。
しょせんはトマトスパゲティ。

出版社 / 著者からの内容紹介
大切な人を、自分の心を取り戻す再生の物語。
大学生のゆきなのもとに突然現われた、もういるはずのない兄。
奇妙で心地よい二人の生活は、しかし永遠には続かなかった。
母からの手紙が失われた記憶を蘇らせ、ゆきなの心は壊れていく…。

単行本: 313ページ
出版社: 集英社 (2008/03)
ISBN-10: 4087712168
ISBN-13: 978-4087712162
発売日: 2008/03



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『九つの、物語』(橋本紡)
『九つの、物語』(橋本紡/集英社) またひとつ、本が好きでよかったと心から思う作品に出会った。 始まったときからその予感はあって、このまま読み進めればこの幸福は終わってしまうのだとわかっていて。 しずかなしずかな、やさしい物語の辿り着く場所は、
| 朝から晩まで本を読んでいたい | 2008/06/20 9:48 PM |


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