アタシが読んだ本のことなどをさらさらと……



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ボトルネック
ボトルネック
ボトルネック
米澤 穂信

軽い感じの文体とは裏腹に、かなり重い内容。
状況を考えてみると、ひどく重くて暗くてやりきれない気分になる。
ボトルネックというタイトルについても、文中に一度出てくる。
なんかの説明の引用で出てくるんだけど、ないほうがいいもの、削除すべきもののメタファーとして。
なんだかもう「そりゃあんまりでしょ」という感じ。

高校1年生男子が主人公。
幼少のころから両親がそれぞれ恋人を持っていることに気づき、諍いが絶えない家庭。
その家でネグレクト状態であるのに、それさえ受け入れていた彼。
「自分のことを可哀想だとは思わない」という彼が恐ろしく不憫だ。

そんな彼が唯一心を傾けた同級生の女の子が崖から落ちて死んだ。
その死をようやく受け入れ、事故現場に弔いに行ったところで、彼もまた同じ崖に落ちる。
ところが崖から落ちたと思ったらなぜか地元にワープしている。
確かに知っている場所のはずなのに、そこは別の空間で……。
なんていうとファンタジーかオカルトみたいだけど、もっと現実的で悲しい。

そこは生まれてこなかった彼の姉が住んでいる世界。
彼の世界では、母のおなかにいる間に亡くなった姉。
彼女が生まれなかったせいで生まれてきたのが彼。
両親と子ども2人という家庭において、その下の子どもがサキなのかリョウなのかっていうだけの違い。
それなのに、周りの人たち、周囲の状況が微妙にでも確実に違っている。
その違いを感じるたびに彼は絶望的な気分になっていく。
間違いなく、彼がいた世界より姉がいる世界のほうが、みんなが幸せに暮らしている。
それってどうよ?

2人のうち1人しか生まれてこられない状況の中で、その両方の状況を知ることができたってことでしょ。
それなのに、どう考えても自分が生まれてきた世の中よりも、彼女が生まれてきた世の中ほうが素敵だって。
なんかガクゼンとしちゃうわ。

諍いの絶えない酷い状況の彼の仮定は、彼女の世界ではなんと全く別の状況。
彼が心を痛めた女の子の死。
それでさえ、姉の世界では起こってないなんて。
モノゴトには岐路っていうもんがある。
その岐路で、彼と彼女との対応が全く違っていた。
そのせいで状況が大幅に違ってきたってハナシ。
……恐ろしい恐ろしい。

エンディングでは、姉の世界から自分の世界へ戻った彼。
果たして彼は、その決してよいとはいえな状況に戻って、どうするのか?
結末は書かれていない。
それを想像すると、絶望感と、それでもって思う気持ちとが混乱して、なんだか寝付けなくなりそう。

ただ、こんなテーマでこんだけ一気に読ませるって、この作者の力量なのかもしれない。
若しくはアタシの感覚にビンゴだったのか。
この恐ろしく重い内容なのに、意外と気が重くならずに読めるのは、この文章の雰囲気のせいかも。
ということで、この米澤サンという作者、アタシのお気に入りに入ってしまったのかも。

内容(「BOOK」データベースより)
恋人を弔うため東尋坊に来ていた僕は、強い眩暈に襲われ、そのまま崖下へ落ちてしまった。
―はずだった。
ところが、気づけば見慣れた金沢の街中にいる。
不可解な想いを胸に自宅へ戻ると、存在しないはずの「姉」に出迎えられた。
どうやらここは、「僕の産まれなかった世界」らしい。

単行本: 248ページ
出版社: 新潮社 (2006/8/30)
ISBN-10: 4103014717
ISBN-13: 978-4103014713
発売日: 2006/8/30


| 米澤 穂信 | 13:01 | comments(2) | trackbacks(0) |
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コメント
NAME : pumila
DATE : 2007/12/02 8:49 PM
>pachiraサマ
はじめまして。稚拙な文を読んでくださってありがとうございます。
生まれてこなかった兄弟。その代わりにいる自分。ちょっと切ないですね。
だけど同じ遺伝子っていうところに目を向けると、素敵な想像を駆り立てることに気づきました。
兄弟が居合わせる仮想空間で、それぞれ同じ女性のことが好きで……この小説とはまた違った、明るいお話が1本できそうですね。

NAME : Pachira
DATE : 2007/12/02 10:11 AM
私にも生まれるはずの兄がいました。もし彼が生きていれば、当然私は削除されるべきもの、自分の世界(居場所)はなくなっているのですが、同じ遺伝子ですから、似たような場所にいると思いたいです。同じ女性を好きになったり・・・


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