アタシが読んだ本のことなどをさらさらと……



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県庁おもてなし課
評価:
有川 浩
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 1,680
(2011-03-29)

マンガっぽい甘いラブコメが印象的な有川サン。
新刊が出てるの知らなくて、たまたま本屋で見つけてしまいました。
この表紙の雰囲気はちょっと好みじゃないけど、控えめなタイトルの配置はよい。
そして読み始めるとタイトルどおりの内容。

高知県が新しく作った「おもてなし課」。
その思い切ったネーミングのことは聞いたことがある。
けど、よくある観光課っていうのの名前をちょっと今風にしただけなんだろうって思ってた。
つまり実際にある高知県のおもてなし課を描いた小説。

主人公は「おもてなし課」なる部署に配属になった掛水クン。
この課では何をしたらいいのか分からないまま、とりあえず観光特使ってのをやってみようかってなる。
地元出身の著名人なんかに特使になってもらうってアレです。
で、県内の観光地の無料チケットを裏に印刷した名刺を配ってもらうということらしい。

この特使の一人となった東京で活躍する作家がキーマン。
彼は最初の特使の依頼を受けてから、一ヶ月間音沙汰梨のおもてなし課に電話をかける。
「あの話ってまだいきてるの?」
「一ヶ月も音沙汰なしの場合、普通なら話は流れたと思っちゃうんだけど」
しょっぱなから民間と県庁との時間のズレに気づかされる。

グダグダなスタートを切ったおもてなし課は、それでも業務を進めようと一生懸命にがんばる。
地元を愛する作家は、苦言をたくさんいいながらも、彼らにとっては力強い味方になる。
そしてもっと大きな存在となるのは、県庁を早期退職して今は民宿を営んでいる清遠さん。

彼は、県庁在勤当時、県立動物園と私立動物園の改築にあわせて、
1つの動物園に統合し、パンダを誘致して観光立憲とせよという持論を広げ、
変化を嫌う県庁全体から煙たがられ、閑職に追いやられた挙句早期退職したオトコだった。
熱い思いとスケールの大きな企画を持っている清遠さん。
それを受け入れる体制になかった県庁は、10年たってもまだ相変わらず県庁体質のまま。
そんな中、少しずつ変えていくおもてなし課のメンバーは、
高知県の自然を使った観光企画を目指して、県庁体質に挑んでいく。

大きくいえばサクセスストーリーですよ。
県庁体質から少しずつ抜けていき、民間を巻き込んだ企画を進めていく。
こういう前向きな小説って、読んでいてやっぱり気分がいい。
そしてお話の中には、有川サン得意のちょっと古典的なラブコメ要素もちゃんと入ってるし。
ただ、わざとなんだろうけど台詞が全部方言。これがなかなか読みづらかったな。

こういうのって、やっぱり公務員のみなさんは読んでみるべきなんだろうなって思う。
特に観光とか企画とかの部門の人たちってわけじゃなくて、誰もが。
もちろんしっかりとしたアンテナを持っている公務員も中にはいるんだろう。
だけど、やっぱりそれが個人のレベルじゃ、なにも変わらないから。
お客様視線とか、民間ペーストか、そんな言葉は行政関係でもいわれるようになって久しいが、
果たしてそれが本当に分かっているだろうか?
お客様目線ってなんだ?
この小説では、小さなシチュエーションの小さな台詞なんかでそういうのを感じさせてくれる。

そして、反目しあっている人たちが少しずつ打ち解けていく様子。
また、仲間からたった一人の大事なヒトに変わっていく様子。
そんないろんな人間関係も、気持ちよく読ませてくれる。
すべてにおいて、ご都合主義だったり、深さが足りないような気がしたりもするけど、
やっぱりこの軽い感じが有川さんらしいし、キライじゃない。

なんと言っても、清遠さんと県庁との関係が切なくて泣ける。
自由で大胆な発想を持った男を切り捨てた県庁。
そんな県庁にできたおもてなし課に助けてほしいと乞われて、過去には目をつぶって手助けする清遠さん。
そしてチームとしてうまく回りだしたころ、再度清遠さんを切り捨てようとする県庁。

う〜ん。
県庁に勤めている人たちが悪いわけじゃないんだと思うのね。
いわゆる民間を知らずに県庁に就職したヒトなんて、絶対に悪気はないはずだと思う。
なんせ、彼らにしてみたら県庁体質がすべてだから。
ほかを知らないから気づかないし、気づけないし、指摘されてもピンと来ない。
そんな体質は、個々人ではなくて県庁という組織が受け継いでしまうのかもなって。

そんなことを考えながら、エンディングは有川サンらしい、あったかいものに。
やっぱり小説ははっぴ0エンドがステキね。

そうそう。この小説は、巻末に対談が載っている。
実際にある高知県おもてなし課の人と作者との対談。
あれれ?
たしかに「高知県おもてなし課」は実在するけど、フィクションだと思ってた。
この対談と小説とを対比してみると、この小説、実は準ノンフィクション。
さすがにパンダ誘致論は実在しないものの、小説に出てくる作家は実は有川サン。
そしてこの小説と同じように、地方紙にこの小説が連載されていたらしい。

こうしてみると高知県、うらやましい。
著名人がいるっていうだけでもそうだけど、
その著名人が、自分に出来る一番効果的なPRをしっかり考えてくれるなんて。
小説家が地元の自治体のPRを依頼されて、一番効果的にPRできるのがそれを題材にした小説を書くこと。

この小説の中には、高知県のいいところがたくさん出てくる。
実はアタシ、高知県にはいったことがない。
竜馬とカツオのたたきぐらいしか思い浮かばなかったんだけど。
ぜひ高知に行ったら、高知城に行ったり、日曜市に行ったりしてみたいな。
そして海亀の産卵みたり、四万十川で釣りをしたり。
こうして高知に行ってみたいなって思わせるのって、やっぱり小説の力って強い。

高知県おもてなし課のサイトはこれ。
あれれ?思いのほか行政っぽいものでちょっとビックリ。
だけど中をよく見ると、トイレマップがあったり、観光特使制度による無料施設とかがあったり。
小説で取り上げられていたものが形になっててニヤリ。
有川サンは、この本の印税を全部、東日本大震災の復興のために寄附するんだって。
震災後、あらゆることに自粛ムードが漂う風潮に、「なんか違うんじゃないかな」と思ってた。
こんなときだからこそ、明るい話で儲けて支援したいっていう感じがステキね。
なんか偽善っぽくなくて。

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| 有川 浩 | 19:49 | comments(0) | trackbacks(5) |
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本 「県庁おもてなし課」
有川浩さんは好きですが、この作品は中でもかなり好きの部類に入ると思います。 個人
| はらやんの映画徒然草 | 2012/02/05 6:07 AM |

おもてなしの仕事
小説「県庁おもてなし課」を読みました。 著者は 有川 浩 県庁、公務員たちを主人公に いわいる観光課たちの奮闘劇 まず 題材が面白く 観光を盛り上げるには? というね けっこう実話もあるらしくて・・・ いい意味でクセがなく 読みやすいですね 最初はダメタメか
| 笑う学生の生活 | 2012/02/02 5:50 PM |

【県庁おもてなし課】(有川浩)を読了!
地域活性化にかける若手職員の奮闘と恋の行方は  まずは来訪記念にどうかひとつ!  人気blogランキング【あらすじ】地方には、光がある―物語が元気にする、町、人、恋。とある県庁に突如生まれた新部署“おもてなし課”。観光立県を目指すべく、若手職員の掛水は、
| じゅずじの旦那 | 2011/07/15 6:32 PM |

『県庁おもてなし課』/有川浩 ◎
きゃ〜!きゃ〜!きゃ〜〜〜!!! やっぱり、有川浩さんは素晴らしい! 全編に散りばめられる土佐弁が、水無月・Rの萌え魂{%ハート2webry%}を揺さぶるのですよ! しかと受け止めました、『県庁おもてなし課』の心意気! 水無月・R大絶賛!読んだら即萌え!萌えの
| 蒼のほとりで書に溺れ。 | 2011/04/27 10:27 PM |

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