アタシが読んだ本のことなどをさらさらと……



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陸王
評価:
池井戸 潤
集英社
¥ 1,836
(2016-07-08)

久しぶりに池井戸さん。

それまで大のお気に入りだったのに、例の半沢さんのドラマで有名になってしまって、なんだかちょっと愛着が薄れたように感じてたけど。

やっぱり読んでみるとオモシロイ。

がんばる経営者の苦戦を描いた相変わらずのものだけど、やっぱり単純に感動するし、手が止まらなくなるし。

 

百年の歴史を持つ老舗の足袋製造業者が、新たな事業としてランニングシューズに参入。

そしていろんな課題とか問題にぶつかりながらも、実直な経営者は前に進もうとする。

 

できるかできないかではなくて、やりたいかやりたくないか。

地道に積み上げるしかない信頼。

夢の実現と現実の厳しさとか、裏切りとか。

そんな葛藤が、読みながらストンと素直に入ってくるかんじ。

 

こういうの読むと、自分のことをふりかえるいいきっかけになる。

そして読み終えて、なんだか気分がいい。

マンネリだろうがなんだろうが、こうして前向いてがんばる市井の人たちをこれからもずっと描いてほしい。

 

 

 

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| 池井戸 潤 | 12:52 | comments(0) | trackbacks(0) |
ようこそ、わが家へ
例の『倍返しだ』のあのドラマで一気に有名になった池井戸サン。
例のごとくドラマ、見てなかったから、詳しくは知らないんだけど。
なぜか文庫本で出てた。

これはまぁ、面白かったな。
池井戸さんならではの会社モノの部分はもちろん、
なんと家庭でもトラブルが起きて、
家でも会社でも大変なお父さん。

しかも彼は半沢氏みたいに強い男ではなく、
平和主義で温厚で、普通のオジサン。
だけど、作者の描く主人公らしく、
原則を重んじるまっすぐな男。

珍しく電車で見知らぬ男に注意をしたことで逆恨みをかい、
家にいたずらがされるようになる。
その相手がわからないまま、不安な日々を過ごす家族。

そして彼は銀行から中小企業へ出向している。
会社では、敏腕営業マンでありながら、
なんか怪しい男に対する疑惑を抱きながら、
強く対抗することもできずにいる。

そんな状況の中、家庭では妻と息子と娘、
そして会社では部下の女性社員が彼の強い味方になる。
そうそう。
こういう心の支えになる味方がいるって、大事よね。

強くなくて、人より凄く秀でているわけではなくても、
地道に正直に、原則に忠実に生きるオジサンの姿に、
なんだか読んでるこっちも少し元気をもらった。

内容紹介
恐怖のゲームがはじまった。
真面目なだけが取り柄の会社員・倉田太一は、ある夏の日、駅のホームで割り込み男を注意した。
すると、その日から倉田家に対する嫌がらせが相次ぐようになる。
花壇は踏み荒らされ、郵便ポストには瀕死のネコが投げ込まれた。
さらに車は傷つけられ、部屋からは盗聴器まで見つかった。
執拗に続く攻撃から穏やかな日常を取り戻すべく、一家はストーカーとの対決を決意する。
一方、出向先のナカノ電子部品でも、倉田は営業部長に不正の疑惑を抱いたことから、窮地に追い込まれていく。
直木賞作家が“身近に潜む恐怖"を描く文庫オリジナル長編。

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| 池井戸 潤 | 23:21 | comments(0) | trackbacks(0) |
7つの会議
評価:
池井戸 潤
日本経済新聞出版社
¥ 1,575
(2012-11-02)

池井戸さん得意の組織と個人の弱さと強さを考えさせられる一冊。
一つの会社の中で起きるあれこれ。
それぞれ異なった話を描きながら、それぞれが少しずつつながっていたり重なっていたり。
一つの会社の中にも当然いろんな部署があり、
いろんな立場の人たちがいて、いろんなつながりがあって。
興味深く面白く読みました。

不正と隠蔽なんて大それたことは身近にないかもしれないけど
組織の中で働くサラリーマンなら共感することがあちこちに。
正しいことをただ声に出していうことでは解決できないことがたくさんある。
内部告発の怖さをひしひしと感じる。
ただ、何もしなければ問題は解決されず、組織の体質は変わらない。

池井戸さんの小説は、最後は必ずいい人が勝つ。
悪いことをした人はそれなりの懲罰を受ける。
全体的に小説の細部にわたってリアルさを描く作者だけど、
この話の落としどころはいつも勧善懲悪っていうところがイイ。
最後だけリアルさに欠けるっていう見方をする人もいるだろうけど、
そうじゃなきゃ読んでて楽しくないじゃないか。

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| 池井戸 潤 | 23:03 | comments(0) | trackbacks(0) |
ロスジェネの逆襲
評価:
池井戸 潤
ダイヤモンド社
¥ 1,575
(2012-06-29)

池井戸サン、好きなんだな。
これも夜になってから読み始めて、すぐにマズいと気づいたんだけど時すでに遅し。
結局途中でやめることができなくて、気づけば3時。
翌日のツラかったことといったら。

『俺たちバブル入行組』の主人公、半沢氏のその後が描かれている。
人事が怖くて仕事ができるか。
半沢氏の潔い姿勢が、いつもながら勇気をくれる。

バブル期に銀行に入行した彼。
前2作でもいろいろと無理難題に立ち向かってきたが、
そのあおりを受けて子会社の証券会社に出向させられている。
そこで起きる仕事上の問題と、銀行からの横槍に立ち向かう。

そして本作では、彼らバブル世代といわゆるロスジェネ世代との関係も
いい具合に描かれている。
バブルの尾が残るころに子ども時代をすごし、
大人になるにつれ社会は悪くなり、
何一つ悪いことなんてしてないのに、
就職氷河期とかいうひどい世の中に放り出された。

そんな世代から見たバブル世代の人たちが、
時代に恵まれてこれまでやってきて、
大した仕事をしなくても問題ないと思っている
いやな世代だという見方が多い。

半沢と一緒に仕事をする後輩とを、
バブル世代とロスジェネ世代という位置づけで、
彼らの違いを描きながら、それでも最後は世代のせいじゃないというもっていき方。
バブル世代は団塊世代のことをそんなふうに疎ましく思っていたという。
世代間のこういう思いって、いつの世にもあるんだなって。
それでも結局は個人なんだわ。
ロスジェネ世代にも、そういう環境におけば一生懸命やる人はしっかりやる。
バブル世代にも、状況に振り回されることなく強い意思で仕事をする人もいる。
団塊世代にも、しっかりと責任を取る前向きな人もいる。
なんかこういうのって読んでいて気分がいいな。

半沢が後輩に言う言葉が、いちいち今のアタシには染み入るよう。
どこにいようが今目の前にある仕事を責任を持ってしっかりやる。
そういうふうに言い切れる大人ってカッコいい。

子会社に出向してもなお、前向きに精力的に仕事をする判沢。
回ってきた仕事がある会社の買収相談。
大きな手数料が入る大きなチャンスだが、
なんと親会社の銀行にこの仕事を横から奪われる。
そしてそこで親会社がした仕事に不穏な動きを感じる。

その対応に怒りを覚え、やりかたに不穏さを感じた半沢は、
絶対にやり返してやると後輩とともに動き出す。
その後、その買収をされる側の会社の相談を引き受けることに。

しかし池井戸さんの銀行モノを読むといつも思うんだが、
銀行ってところは本当にビックリするほど変な組織ね。
これが本当の姿かどうかは分からないけど、
それでもこういう風土の職場なんだろうなって思う。
けど、よく考えたら組織ってだいたいなんかちょっとおかしいところって確かにある。
うちの職場ももちろんそう。

ま、しっかり仕事をする人がいて、逆に世渡りだけで出世する人もいて。
そうやっていろんな人がいるからこそっていう部分もあるのかもな。
近ごろ変に達観したようにそんなふうに思うことがある。
疲れてんのかな。





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| 池井戸 潤 | 21:42 | comments(0) | trackbacks(0) |
ルーズヴェルト・ゲーム
大好きな池井戸サン。
空飛ぶタイヤとか下町ロケットとか、結構な評判だとか。
そんなあとに出版される小説って、読む側もハードル上げてるだろうし
書く側もプレッシャー結構あるだろうし。
どうなんだろうな?という思いで読んでみたんだけど、まったくの杞憂だったようです。
いつもように景気の悪さやいやなライバルなどでハラハラさせられながらも、
池井戸さんだからってことで最後はハッピーエンドだという変な安心感もあって。

読み始めたころは野球を扱ったものか〜っていう、ただそれだけの印象。
青島製作所という中堅メーカーが舞台。
カリスマ社長の思いで創設された社会人野球部は、
業務がそこそこ免除されるという野球部員を抱えるそこそこの規模。
ところが社長が交代し、監督は主力選手を引き抜いてライバル者に移籍。
折りしも景気の悪さが重なり、野球部存続の危機に。

招いた新監督と選手たちとの軋轢から、彼らが理解しあう経緯は、
ありがちながらも読んでいて気持ちがいい。
そして野球部を愛してやまない前社長は会長に退き、
その後に就任した社長はコンサルタント業務をやっていただけあって
理路整然と理屈で整理ができるタイプ。
だけどその社長の手腕もとってもステキ。

経営が苦しくなる中、メインバンクの冷たい対応や
ライバル会社の美しくない取引き。
それらに真摯に、そしてきちんと人の心を持って対応する社長の動きに、
なんだか読んでいて心が動かされた。

そして中堅メーカーであるその会社が誇る技術力を支える技術者。
カタブツでライバル社との取引きのために、開発を急いでほしいという社長の申し出にさえ
あいまいに応じたりはしない職人気質。
最初はなんて四角四面なヤツだと思っていたけど、
確実に果たせない約束を適当にしないという態度であって
その浦では実は精一杯努力をしていた。

最後はもうベタな展開といえばそうだけど、
お決まりのハッピーエンドです。
それでもなんかやっぱりちょっと感動してしまった。
組織で働くって、組織を守るってこういうことなのね〜。

タイトルは、野球好きだったというルーズヴェルト大統領の言葉だそうだ。
「一番面白いゲームは、8対7だ」というもの。
その言葉は野球の試合だけではなくて、いろんな場面で当てはまるのかもしれない。
この小説では、それが野球部や会社など、組織の存続だったりする。
カリスマ会長の言葉が、ちょこちょこと印象的だった。
モノとヒトのコストを一緒にしちゃいかん。
とかね。
今の時代、こういうことをきちんと実行できる経営者って尊敬しちゃいそう。

池井戸サン。また次も期待してます。



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| 池井戸 潤 | 23:34 | comments(0) | trackbacks(0) |
直木賞
たまたま紀伊国屋のサイトを見てみたら、『下町ロケット』がわりと上位にランキング。
なぜ今さら???と思っていたんだけど、ようやく分かりました。
直木賞が発表されたんですね。
近ごろすっかり世間にうとくって(^_^;)

ていうか芥川賞はなし。
……なしってねぇ……。
ということで、下町ロケットです。
これは確かにいい話だった。
また読んでみてもいいな。

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| 池井戸 潤 | 14:06 | comments(0) | trackbacks(0) |
下町ロケット
評価:
池井戸 潤
小学館
¥ 1,785
(2010-11-24)

この人が書く小説って好きなのね。
その中でも今作は、ものすごくイイね。
この厚い本にもかかわらず、次々とページをめくりたくなる感じ。
問題続発でイライラしながらも読みながら応援してしまう感じといい、読後感の爽快さといい。
アタシ、これ大好物ですね。

冒頭は、ロケットの飛行実験シーン。
池井戸サンといえば銀行マンのイメージが強くって、「あれ?」って思いながら読み進めた。
コレまでの作品で作者がコレでもかと描いてきた銀行マンのあれこれももちろん出てくる。
だけどこの作品では、もっともっとそれが広がっている。
研究者と経営者。大企業と中小企業。仕事に対する思い。
夢ばっかり追ってちゃダメだけど、仕事に何の理想も夢も描けなくなったら、それはそれで寂しいじゃないか。
イマドキの考え方とは違うかもしれないし、もっと現実を見るべきかもしれないけど、やっぱりそういう思いって誰しもあるんじゃないかな。
アタシなんて、夢見る余地が少ない地味な仕事をしてるけど、それでも何かの理想とかって捨てちゃいたくないなって思ってるからね。
こういうのって、働く大人たちみんなにススメたいような小説。

ロケット開発の研究者だった男が、実験失敗のあおりを受けて、家業の工場を継ぐことに。
父の後を継ぎ、それなりの企業経営をしながらも、ロケットエンジンに関する研究は続けていた。
その研究成果は実はスゴイもので、日本の大企業の開発部門の一歩先を行くものだった。
中小企業の特許事務のゆるさから、大企業から思いもよらぬ揺さぶりを受けることに。
そして訴訟に巻き込まれ、資金繰りも苦しくなり、銀行からは見放され、顧客は離れていく。
ようやくその訴訟を乗り切り、なんとか軌道修正しようとしているところに、今度は別の大企業から声がかかる。

その大企業がメイン事業の一つにすえているロケット事業。
ロケットのたった一つの、でも一番大事な部品の研究において、中小企業であるはずの「佃製作所」に先を越されていた。
特許の使用をさせてくれという大企業の申し入れを、なんと断ってしまう佃社長。
自分たちでその部品を作って納入するので、それを使ってロケットを飛ばしてくれと交渉する。
これにより社員が二つに割れてしまった。
何のリスクもなく特許使用料が入ってくるという話をなぜ蹴るのか。
でも社長は根気強く社員に話しかける。
自分の作った部品でロケット、飛ばしたいんだ。
だけどなかなかその声は届かない。
不満いっぱいの社員を動かしたのは、技術者としての事務屋としての、とにかくその社員としてのプライドだった。

大企業相手に、「中小企業ナメんなよ」っていう気概。
自社の良さを一番知ってるのは、社員たち。
「佃品質」「佃プライド」
社員の口からそんな言葉聞かされる社長って、ものすごく幸せよね。

プライド。
とっても大事なものです。
忘れちゃいけません。
読みながら涙が出ました。たくさん。
いい本です。


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| 池井戸 潤 | 22:22 | comments(0) | trackbacks(1) |
民王
評価:
池井戸 潤
ポプラ社
¥ 1,575
(2010-05-25)

これはこれは。
金融モノの池井戸サンが、政治モノで新境地か。
しかもなんだかちょっとコメディタッチ入ってたりして。
それにしてもこの作者には、ガチの人間模様を描く印象が強いせいか、
ちょっと意外な感じを抱きながら読み進むことになった。

なんせいきなり奇想天外。
総理大臣が、大学生の息子と中身だけ入れ替わるっていうSFチックな話。
バカ息子が総理大臣の代わりをし、総理大臣が息子の代わりに飲み会や大学に出かける。
そうこうしているうちに、与党議員の中で、ほかにも子どもと入れ替わっていると思われるものが出てきて…。
それらはなんと与野党大物議員を狙ったテロだということで捜査が進む。

この入れ替わりによるいろんな弊害。
例えば漢字が読めない総理大臣だとか、大臣の湿原だとか、酔っ払い会見だとか。
なにやらニュースで見たことがあるようなエピソードが使われていて。
いいんか?こんなことして?

しかしまぁ、バナナ大臣のクダリなんかはしっかり笑わせてもらった。
だけどその一件に関して、バカ息子であるはずの見た目総理大臣の言動がカッコいい。
「バナナという名の大臣はいないとニンシキしております」
っていって笑わせておいて、しっかりその後で
私生活をほじくるよりは、大臣本来の仕事を見よ!と強い態度に出て、
読んでいるアタシの気持ちもスカッとさせてくれて。

とはいえ作者の目の付けどころがソコだったのね。
あまりにもおかしい言動の国会議員たちを見て、
これは何かが起きているに違いない。
っていうか中身が入れ替わってるって思ってみてみたら、意外としっくりきたとか……。

なんにつけ、楽しく読ませてもらった。
それなりにアツく政治を捉えている一面、スルリと肩の力が抜けてて
しかも最後は池井戸さんらしく、正義を感じさせてくれる。
この夏読んだ中で、かなり上位ランキング。


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| 池井戸 潤 | 14:01 | comments(0) | trackbacks(2) |
鉄の骨
評価:
池井戸 潤
講談社
¥ 1,890
(2009-10-08)

これは面白かったな〜。
近頃寝不足が続いてる日曜の夜。
明日の仕事のことが頭にちらつきながらも、途中でやめられなくって結局最後まで読みきってしまった。
池井戸サンといえば、銀行を舞台にした融資関係のもののイメージが強い。
今回の舞台は中堅ゼネコン。
さんざん問題になりつつもなくならない日本の談合について描かれている。

中堅ゼネコンに入社して3年、現場で働いてきた男が、ある日突然業務課への異動を命じられる。
現場一筋。下請け社員が現場でタバコを投げ捨てたりということに真っ向から怒りをぶつけるようなまっすぐな男。
業務課が何をするところかさえ分からないまま赴任した先は、別名「談合課」とも呼ばれるところと知り愕然とする。
現場では現場なりの苦労があるが、仕事を取ってくるためのあの手この手をこの課で初めて知る。
「清濁併せ呑む」ってよく言うけど、意外とこれって難しい。
談合が犯罪であり、悪であると知りつつも、それを避けられない仕事を前に彼は……。

建設業界にはちっとも明るくないアタシでさえ、とっても興味深く読むことができた。
報道は、善と悪を取り上げる。
談合=悪。建前はもちろんそうだけど、現実は同なんだろう?
必要悪だなんて言葉があるけど、果たしてそれだけなんだろうか?
常々そんなことを思っていたアタシだけど、この小説を読んでいろんな事を考えた。
そしてこの小説は一体どこに落としどころを持っていくんだろうと思っていたんだけど。
これまでの小説もそうだけど、この作家が目指す正義っていうものにアタシは共感する。

談合についての考え方の違い。
本音と建前の違い。
政治家と業界との関係。
複雑なマネーロンダリング。
談合と検察との関係。
いろんな要素が、人間関係を織り交ぜながら複雑に絡んでいく。
そんなこんなで、読んでいる本を閉じるタイミングが作れなくて一気読みです。

大手ゼネコンを含めた大規模な談合を取り扱ったものだけど、登場人物の人格がそれぞれきちんと浮き出ていて読み物としても面白い。
主人公の平太はものすごく普通で、彼の言動はとても身近に感じることができる。
そして常務のどっしりとしたカッコいい男っぷりが光っている。
そのほかの同僚や上司も、それぞれに個性を主張している。
なんといっても平太の彼女の萌。
彼女の気持ちの揺れ具合とかって、読んでいて腹立たしいけど、やっぱりリアルだし。


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| 池井戸 潤 | 12:52 | comments(0) | trackbacks(1) |
オレたち花のバブル組
オレたち花のバブル組
オレたち花のバブル組
池井戸 潤

この人の本は、やっぱり面白い。
ホントに相変わらずの銀行員物語だけど。
読み出したら止まらなくなってしまって、結局夜更かししてしまった。

前作「オレたちバブル入行組」の続編。
バブル期絶頂の頃に銀行に就職した世代。
当時は銀行が倒産するなんて考えられない状況だったのに。
その後のバブル崩壊を経て、同期入社組社員の数も激減。
そんな中、気骨を持って銀行業をまっとうしようとする行員を描く。
彼らは自らをバンカーといい、その仕事に自らの理想と尊厳を持っている。
この、気骨ある職業人という設定が、アタシにはとっても魅力的に映る。

小説の中で起きることは、いつもの池井戸さんのモノとくくってもいいだろう。
銀行が行う企業への貸付。
それには業績が大きく左右する。
そこから不正を見抜いて結論を出すバンカー。
この小説の中で語られる一般の銀行員は、こういう場合にとても冷徹である。
業績が悪かったり不正が見つかったりしたらお金は貸せません。
当たり前って言えば当たり前なんだろうけど……。

ところがこのバブル入行組の彼らは、同期や志を同じにする人たちとのネットワークをいかして、なんとか企業を助けようとする。
これはフィクションだからできるものなのかもしれない。
でも、実際にはそうじゃないかもしれない。
こういう銀行員がどこかにいてもいいじゃないか。もしくはいてほしいというか。
そしてやはり作者の王道で、この企業の不正に銀行内部の者が絡んでくる。

主人公の半沢クンがめちゃくちゃ気持ちいい。
自分の中の正義をまっすぐに貫こうとする彼。
相手が誰であろうと、まっすぐに啖呵を切っていく。
現実にいるとすぐにハネられちゃうんだろうケド。

銀行員でなくたって、いわゆる勤め人というヤツは、いろんなところで自分の思う正義を押し殺しているはず。
そういう気持ちを、半沢クンが跳ね飛ばしてくれるようで、読んでいて気分いい。
それも正攻法ってのがまたカッコいい。

最後はそれでもやっぱり組織としての動きで落ち着く。
半沢クンは飛ばされた先で今度はどんな風に過ごしているのか。
無事、出向から銀行に復帰した近藤は、その後活き活きと過ごしているのか。
彼らのその後、また見てみたい気がする。
続編、所望。

内容紹介
今度の敵は小役人。
お前ら、まとめて面倒みてやるぜ!
あのバブル組が帰ってきた!
東京中央銀行営業第二部次長の半沢は、巨額損失を出した老舗のホテルの再建を押し付けられる。
おまけに、近々、金融庁検査が入るという噂が。
金融庁には、史上最強の“ボスキャラ”が、手ぐすねひいて待ち構えている。
一方、出向先で、執拗ないびりにあう近藤。
また、精神のバランスを崩してしまうのか……。
空前絶後の貧乏くじをひいた男たち。
そのはずれくじを当りに変えるのは自分次第。絶対に負けられない男たちの闘いの結末は?!
前作の「オレたちバブル入行組」から、責任もピンチもパワーアップして帰ってきました。
連載時とは結末もキャラクターもがらりと変わり、ほろ苦さも加わったバブル組をお楽しみください。
すべての働く人にエールをおくる等身大サラリーマン小説。
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| 池井戸 潤 | 21:57 | comments(0) | trackbacks(1) |


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