アタシが読んだ本のことなどをさらさらと……



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グラニテ
グラニテ
グラニテ
永井 するみ

先日読んだ「シズコさん」も母と娘の葛藤を描いたものだったが、図らずもまたこんなテーマの本を読んだ。
シックな装丁とグラニテというタイトルだけに気を取られて、内容を考えることなく選んだんだけど。

早くに夫を亡くしてから10年。
カフェを経営しながら娘を大切に育ててきた女。
大事なものをコツコツと守るように生きてきた彼女の生活が一変する。
きっかけは13歳年下の恋人と娘が出会ったこと。
映画監督の恋人は、チラリと一目見ただけで、彼女の娘を映画の主役に使いたいと言い出す。
そして娘もその映画の仕事にのめりこみ、それとともに監督に思いを抱くようになる。

これはなかなかシビアで切ない小説になった。
母と娘として、とてもいい関係を築いてきた二人が、一人の人間同士というか女同士という立場になったとき、そのバランスはあっという間に崩れる。
まぁ、あんまり想像はできるシチュエーションでないけど。

それでもこれだけ年下の恋人を持つ女としては、いろんな覚悟をしながら付き合っているんだろうことは安易に想像できる。
今はいい。ただ彼はきっともっと相応しい女性と相応しい家庭を築くんだろうという覚悟。
43歳と30歳。これはもう不安とかいうより確信なんだろう。
ただ、その相手が自分の娘だなんてことは、ちょっとアタシの想像力じゃムリ。

永井さんの作品なので、勝手にちょっとしたミステリを想像してたんだけど、これは女のエグいところとかズブリと刺して見せ付けるような。
母と娘との対峙もそうだけど、亡くなった夫の友人でいつも彼女に力を貸してくれていた男性が、実は彼女のことを思っていたというクダリなんてものすごくいやらしい。
女が女であることを使ってうまく生きていこうというズルさが。
そして何より、その男性の妻の静かな怒りが、ものすごく恐ろしい。
ただ、エンディングはキレイにまとまっていて、読んでいてほっとした。

そういえばグラニテってあまり口にすることがないな〜思いながら読んでいた。
なんせ外食がほとんどなくって、最近。
おいしい料理を出すお店で、上品なグラニテが食べたいもんだ。
この小説に出てくるのはリンゴと紅茶のグラニテ。おいしそう。

材料を凍らせてはかき混ぜて崩し、また凍らせてはまた崩し。
その単純作業の繰り返しだけなのに、なかなか思うようなものにならないもどかしさ。
変わったことをするわけでもないのに、とても難しい。
母が娘に抱く感情にも似ているのかもしれない。

出版社 / 著者からの内容紹介
愛しているから許さない。母と娘の物語。
万里はカフェのオーナー。夫に先立たれ、17歳の娘唯香と暮らしている。
年下の恋人・凌駕との関係も順調だったが、唯香と凌駕が出会ったことで、歯車が狂い始める…母親と娘との三角関係を描く長編。

単行本: 356ページ
出版社: 集英社 (2008/07)
ISBN-10: 4087712486
ISBN-13: 978-4087712483
発売日: 2008/07



| 永井 するみ | 12:51 | comments(0) | trackbacks(1) |
義弟
義弟
義弟
永井 するみ

なんだかザラリとした感じが残る読後。
なにも終わらないままに最後のページになってしまった。
こういう終わり方はなんとも後味が悪い。

両親の再婚で姉弟になった二人。
彼らは姉と弟でもなく男と女でもなく、彩と克己という二人でいることをとても大事にしていた。
だけどそれはそう思おうとしていただけで、実は違っていたというオチかな?

弟の常にモヤモヤとしたイライラとした気分は良く出ている。
冒頭の放火の準備のシーンが印象的。
そしてそれを救うように現れる彩。
彼女もまた、苛立ちを抑えるために弟に会いに来ていたというのが終盤になって分かるんだけど。
なんだかいろんなものが遠回り過ぎてちょっと面倒な感じ?

最後にもうちょっとどうにかなるのかと思ったら、プッツリと終わってしまって、ちょっと肩透かしを食らった感じがした。
もう一声、っていうかもう一押し、なにかほしかったかな。

内容紹介
克己と彩は血の繋がりのない義理の姉弟。
成人した今、克己の彩に対する感情は、姉以上のものになっていた。
そんな中、彩の不倫相手が彼女の職場で急死する。
助けを求められた克己は、彼女を守るため遺体の処理をするのだが……。
克己の抑えられない破滅的な衝動、男性を受け入れられない彩の秘密。
それぞれの心の闇を描く、衝撃の問題作。

単行本: 339ページ
出版社: 双葉社 (2008/5/20)
ISBN-10: 4575236160
ISBN-13: 978-4575236163
発売日: 2008/5/20
JUGEMテーマ:読書




| 永井 するみ | 23:57 | comments(0) | trackbacks(0) |
グラデーション
グラデーション
グラデーション
永井 するみ

永井するみサンってことで、勝手にミステリだと思っていた。
ところが全然違うもので、あれ??と意表を疲れた感じ。
っていっても、アタシが勝手に思い込んでただけなんだけど。

桂真紀ちゃんという女の子が、少しずつ少しずつ大人になっていくという小説。
彼女が14歳の中学生のころから、一つずつ歳をとっていくたびに少しずつ変わっていくのを年を追って描いている。

特になにが起こるでもない。
女の子が集まってキャアキャア騒いでいる様子に心から馴染めなかったり。
明るくて誰とでも合わせられてという器用さがなかったり。
なんとなく生きにくさを感じながら、受け身な感じで生きている彼女に親近感を覚える。

ものすごく等身大な感じがする。
その年代の自分を思い出すような。
泣いたり落ち込んだり悩んだり。
そうやって自分の進みたい道をゆっくり探せばいい。
そして最後には心からほっとできる、自分らしくいられる相手を見つける。
なんだか気持ちがストンと落ち着くような話だった。

たくさん考えて悩んで、少しずつ前に進んでいけばいい。
そうするうちに回りも自分も少しずつ変わっていく。
っていうのがタイトルにこめられているんだろう。
そうやって彼女が落ち着いた先は、昔から知っている男の子。

気持ちが落ち着く相手と一緒にご飯を食べながら話をして。
どこに行きたい?
本当にどこでもいい。
そうやって近くにいて話をして。
それだけで十分。
その気持ち、すごくよく分かるな〜。

商品の詳細
単行本: 301ページ
出版社: 光文社 (2007/10/20)
ISBN-10: 4334925766
ISBN-13: 978-4334925765
発売日: 2007/10/20
JUGEMテーマ:読書




| 永井 するみ | 07:44 | comments(0) | trackbacks(3) |
カカオ80%の夏
カカオ80%の夏 (ミステリーYA!)
カカオ80%の夏 (ミステリーYA!)
永井 するみ

女子高生が主人公の軽いミステリ。
意外と面白かったな〜。
まぁ犯人は誰か?というのはソイツが出てきた瞬間になんとなくアタリをつけてしまえちゃうんだけど、そこにたどり着くまでの彼女の行動を通していろんなものが見える。

女子高生の凪というコを身近に感じてしまう。
友達がいないわけじゃないけど、友達だと思える友達というのが思い浮かばない。
ただ学校に通って適当に話をしてという毎日を送っている。
そんな女の子が、事件を通して友達を見つける。ついでに好きな人も。

この年代は特にそうなのかもしれないけど、本当に感謝してるのに言葉にするとすごくそっけない。
甘えたいと思っていてもうまくそれを伝えられない。
っていうか、大人になってもやっぱり難しいことなのかもしれない。
うまく言えない分、行動するしかない凪。
なんだかとても素敵な女の子じゃないかな。

すっかり大人も大人のアタシだけど、やっぱり気持ちをうまく伝えるのは上手にならない。
思ったことを思ったときに言えばいいのかどうかさえ分からなかったり、言ってはみたものの、なんか足りないとかなんか違うとか自分で思ってしまったり。
特に自分が大事だと思っている人には、きちんと思ってることを伝えたいと思っているんだけど、いくつになっても難しいもんやね〜。

なんだか今日も夜更かし。
しかも今夜のBGMはアベマリア。
なんでかしら?

単行本
出版社: 理論社 (2007/04)
ISBN-10: 4652086040
ISBN-13: 978-4652086049
発売日: 2007/04


| 永井 するみ | 00:57 | comments(0) | trackbacks(0) |
ボランティア・スピリット
ボランティア・スピリット
ボランティア・スピリット
永井 するみ

う〜ん……。
やっぱり日本人って島国生まれの島国育ちだからね。
外国人っていう者に対する認識ってちょっと特別なんじゃないのかなぁ。
などと日ごろから思ってるんだけど。

これは市民センターで開かれている日本語教室。
教える人はボランティア。教わる人はさまざまな外国人。
ここで起きるちっちゃなトラブルが短編としてつながっている。

心からこのボランティアをしている女性。
ボランティアをしている自分というものを大切にしているオバサン。
外国人男性と親しくなりたいためにやっている女性。
会社を辞めて妻と二人家にいるのがイヤで日本語を教えるオジサン。
いろんな人がいる。

教える日本人の数だけ、外国人との接し方もあって、その想いもいろいろ。
ちょっとした事件も起きたりして、プチミステリといったところかな。
山崎サンというオジサンのスタンスが好きだな。
サラリとしていて、肩肘張ってなくて、外国人に対する偏見とかコンプレックスとかもなくて。
っていうか、そういうの何も考えずに淡々とこなしてる感じが。

仕事柄アタシも韓国人と何人か付き合った。
やっぱり考え方が大陸的っていうの?
日本人とはまったく違うという面もいっぱいあった。
それでも、やっぱり同じように感じることもあるし、同じことで怒ったり笑ったりすることもあるし。
どこの国の人かとか、結構どうでもいいっちゃどうでもいいんかなって思う。

あぁ。話がそれた。
まぁ、永井サンっぽいっていえばそんな短編集。
淡々と読めて、よござんした。

内容(「MARC」データベースより)
地方都市・K市の市民センターで開かれている外国人労働者向けの日本語教室を舞台に展開される様々な人間模様を、ミステリータッチで描いた連作集。
盗難疑惑などの社会の縮図ともいえる事件を通して、人間の心の底を抉り出す。

単行本: 295ページ
出版社: 光文社 (2002/08)
ISBN-10: 433492364X
ISBN-13: 978-4334923648
発売日: 2002/08

JUGEMテーマ:読書




| 永井 するみ | 20:59 | comments(0) | trackbacks(0) |
ランチタイム・ブルー
ランチタイム・ブルー
ランチタイム・ブルー
永井 するみ

30歳を前に、一人で生きていくためにも長く続けられる仕事をしようと、転職を決めた知鶴という女性が主人公。
彼女は、インテリアコーディネーターというものになろうと転職したにもかかわらず、試用期間の3ヶ月間は、仕事という仕事もなく、他人のランチの手配など雑用ばかり。
そんな毎日の中、彼女の上司の男性が救急車で運ばれるという事件が起きる。
実は彼女がちょっとした悪意もあって、彼に一日前のお弁当を出したことがあり、すっかり自分のせいだとオロオロする知鶴。
だけど実際は……。
コレは以外に面白かった。

その後、この知鶴がこの会社で、また自宅で遭遇する小さな事件。
それらがミステリ仕立ての短編でつづられている。
そしてそんな中、この知鶴が少しずつ成長し、仕事にもやりがいを感じるようになり、そして個人的にも結婚を考える相手も出てきて……。

一人の女性の日常として読むのもまた面白い。
だけどやっぱりアタシは、この知鶴という女性が仕事というものに向き合う姿が美しいと思う。
なんともまぁ、さらさらと読みやすく、あっという間に終わってしまう短編集だけど、割とおもしろかった。

出版社/著者からの内容紹介
オフィス内食中毒、依頼主の殺人。駆け出しのインテリア・コーディネーター知鶴のまわりで起こる大小様々な事件の真相とは!? 恋愛、結婚、仕事などの彼女の個人的な悩みもからめて描く連作ミステリ。

内容(「BOOK」データベースより)
29歳。独り暮らし。恋も仕事も行き先不明!?駆け出しのインテリア・コーディネーター知鶴の日常はささやかな事件と隣り合わせ。“オフィス内外”ミステリー。

単行本: 273ページ
出版社: 集英社 (1999/12)
ISBN-10: 4087744426
ISBN-13: 978-4087744422


| 永井 するみ | 21:54 | comments(0) | trackbacks(0) |
ダブル
ダブル
ダブル
永井 するみ

書き出しは、マタニティヨガなんかに通う平和な妊婦の様子。
ところがその次に出てくるのは、取材する女性ライターの様子。
あぁ。この二人がそのうちつながっていくんだなぁ。
それまではこうやって交互に様子が書かれていくんだなぁ。
とこの時点で思い、久しぶりに読む推理小説っぽい小説だと位置づけた。

通りすがりとか面識もないけれども、そんな周りの誰かが疎ましく思えたりすることって、かなりあると思う。
それに対して「死んでくれればいいのに」とまで思うか思わないか……。
あるいは思うときだってあるかもしれない。
けど、実際に手を下す人なんてそうそういないだろう。
あまりにも人間の中にある毒に対して正直すぎ。

この女性ライターってのが、定石どおり勘がいい。
見た目はふわふわと優しさのかたまりみたいな妊婦さん。
彼女の中の毒にいち早く気づく。
そして問題は証拠。

この小説で殺された人って、たいした付き合いのない他人から見れば、どっちかというと「嫌な人」というのに分類されがちな人たち。
見た目とか声とか言動とかで。
だけど、そういうふうに思っている人ばかりではないことがわかってくる。
そう。アタシもそのことに気づいた。
誰かが死んで悲しむ人がいないわけないじゃないのよねぇ。

今日もまた散文みたいなモノを書いてしまったけど、このダブルは以外に面白かった。

内容
若い女性が突然、路上に飛び出し、車に轢かれて死亡した。事故と他殺が疑われたこの事件は、被害者の特異な容貌から別の注目を浴びることになった。興味を持った女性ライターが取材を進めると、同じ地域でまた新たな事件が起こる。真相に辿り着いた彼女が見たものは―。かつてない犯人像と不可思議な動機―追うほどに、女性ライターは事件に魅入られていく。新たなる挑戦の結実、衝撃の長編サスペンス。

単行本: 428ページ
出版社: 双葉社 (2006/09)
ISBN-13: 978-4575235616




| 永井 するみ | 22:43 | comments(0) | trackbacks(0) |


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