アタシが読んだ本のことなどをさらさらと……



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手の中の天秤
評価:
桂 望実
PHP研究所
¥ 1,680
(2013-07-11)

なんだか切ない気持ちで読んだ。
刑事事件の被害者と加害者。
そのどちらもが、そしてその周りの人たちが少なからず人生を変えられてしまう。
特に被害者が志望した事件は特に遺族の思いの行き場がない。
そんな中、加害者と被害者遺族の関係や、それぞれのその後の生き方。
それらを見続けるという職業が仮定された小説。

少年野球のコーチをしていた男、
自殺志願者が集うサイトを運営していた男、
親の介護に疲れた娘など
加害者側にもいろいろな背景や思いや事情がある。

一方で、息子や夫や親を殺された遺族は、
加害者を憎むこと以外にできなくて、
でも憎んだからといって大事な人が生き返るでもなくて。
そして不可抗力ではないかという場合には、加害者を憎むことすらできなくて。

そんな遺族に対して、新たに遺族預かり制度というのが創設されている世の中を描いている。
執行猶予期間の最初の2年間、遺族は加害者のその後を知ることができる。
公務員である係官は、年に2回加害者の状況などをまとめた報告書を遺族に届ける。
この制度を利用するかどうかは遺族が決めることができるというもの。

新米係官の主人公は、上司とともに仕事をしながら、この制度のことを深く知っていく。
「報告書には意味がない」という上司に反発したり、
遺族側にも加害者側にも、同情したり憤りを感じたり、
そして最後には、それでも生きていく人間の強さに気づいていく。

とても重いテーマの割には、作者の筆圧のせいか、割とサラリと読むことができた。
事件によって家族を亡くした遺族は、基本的に加害者のその後のことを知る術がない今。
この小説のような制度かどうかは別にして、何かの手立てが必要なのかもしれないと思う一方で、
それを知ることで、逆に前に進めなくなりそうな気もしたりして。
いろんなことを考えさせられる小説。
たまにはこういうのもいい。


内容紹介刑務所に送るか送らないかを決めるのは、遺族。
裁判で執行猶予がついた判決が出たときに、被害者や遺族が望めば、加害者の反省具合をチェックし、刑務所に入れるかどうかを決定できる制度「執行猶予被害者・遺族預かり制度」が始まって38年がたっていた。
30年前、その制度の担当係官だった経験があり、今は大学の講師として教壇に立つ井川。
彼は、「チャラン」と呼ばれるいい加減な上司とともに、野球部の練習中に息子を亡くし、コーチを訴えた家族、夫の自殺の手助けをした男を憎む妻など、遺族たちと接していた当時のことを思い出していた。
加害者を刑務所に送る権利を手に入れた時、遺族や被害者はある程度救われるのか。
逆に加害者は、「本当の反省」をすることができるのか。架空の司法制度という大胆な設定のもとで、人を憎むこと、許すこととは何かを丹念な筆致で描いていく、感動の長編小説。

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| 桂 望実 | 14:26 | comments(0) | trackbacks(0) |
週末は家族
評価:
桂 望実
朝日新聞出版
¥ 1,680
(2012-01-04)

この小説のテーマはズバリ「思い込み」。
大輔はシェイクスピアかぶれの劇団主宰者。
その妻の瑞穂は、無性愛者。
恋愛感情を持つことのない彼女だが、大輔と結婚して幸せに暮らしている。
周りの人たちの「女性は子どもをほしがるもの」という思い込みのせいで、辛い思いをし続けている。

そんな二人は施設の子どもの週末里親になる。
理由は邪なもので、子役としてぴったりの子がいたから。
劇団だけでは食べていけず、個人的な場で演劇の派遣業を生活の糧にしている。
例えば何十年も音信普通だった臨終間近の父親に、ありもしない家族を紹介するという男の依頼で、
劇団員を家族として派遣し、つかの間家族の役を演じるというようなもの。
子役の需要が増えてきたため、この制度を使ってみようという軽い気持ちで始めたもの。

週末、都合がいいときに施設の子を預かる。
つまり都合がいい制度。
そのため子どもとの距離が深まりにくい。
一緒に派遣の仕事をしたり、実際の演劇で舞台に立ったり。
そうこうしているうちに、3人の関係が少しずつ変わっていく。

その中で、人の思い込みってなんだかタイヘンだな〜って気づく。
例えば施設に暮らす10歳の女の子は、みんな母親に会いたいものだと思うだろうとか
例えば女性は必ず男性を愛して、結婚したら子どもを持ちたいと思うだろうとか
例えばシェイクスピアは偉大だから、原作を崩してはいけないだろうとか。
週末里親でしかない2人と少女が仲良く一緒に居るだけで、
「お父さんとお母さんと一緒におでかけ?」と声をかける人たち。
みんな勝手な思い込みからくるもの。

しばらくして少女の本当の母親が彼女を引き取りたいと言ってきた。
それまで何年も、会いにくるといいながら、毎回ドタキャンしていた人が。
施設の人は悪気なく言う。
子どもが会いたがっている。
会いにきてやってくれ。
できたら子どもを引き取って親子で暮らしてみないか。
……どこにも少女の気持ちが入る隙がない。
彼女が本当に、母親と暮らしたいと思っていないことに気づかない。
というかそんな声を聞こうともしない。

そして週末里親という身勝手な制度に悩んでいた瑞穂も、自分の思い込みに気づく。
毎日ずっとずっと里親としてこの子を育てるのは荷が重過ぎる。
とはいえ、週末だけというのも身勝手な気がする。
というのは、やっぱり親と子という仕組みについての思い込みからくるもの。
3人はチームとして、連れとして一緒にやっていくことになる。
いいエンディングだわ。

途中、この10歳の子が、施設で上演する劇の台本を作るシーンがある。
題材はマッチ売りの少女。
最初、大輔が書いた台本は、あくまで悲劇だった。
それは原作が悲劇だから。という思い込み。
それを10歳の少女が打ち崩す。
マッチをすって、悲しく死んでいくようじゃダメだ。
もっと強く生きてほしい。
そんな願いのこもった劇は、いいストーリーだった。
強くたくましく生きていく少女って、カッコいいじゃない。


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| 桂 望実 | 21:40 | comments(0) | trackbacks(0) |
恋愛検定
評価:
桂望実
祥伝社
¥ 1,575
(2011-08-31)

桂望実さん。
相変わらず『県庁の星』の人だと思ってしまう。
結構いろいろと小説を出していて、どれもそんなに悪くはないのに。
なんだかデビュー作の印象が強くて、それはそれでカワイソウな気がする。

で、コレ。
恋愛の神様が突然現れて、ハイ、恋愛検定の受験者に選ばれましたと話しかけてくる。
この検定は4級から準1級、1級とあって、さらに上はマイスター。
どの級を受験するのかは、神様が出す質問への答えによってきまる。
で、その検定を受ける人を一人ずつ主人公にした短編が並んでいる。
……悪くないんだけどなぁ。

恋愛検定というのは、恋愛力によって合否が決まるもので、
受験者が誰かと付き合いだしたり結婚したりするかどうかは問題ではない。
では恋愛力ってなんだ?
例えば、自分の気持ちに気づくことだったり、
その気持ちを素直に伝えることだったり、
相手の気持ちを思いやることだったり、
そんなあれこれを総合的にいうのかな。

ただ、どの主人公にもいまひとつ感情移入できない感じで。
そのせいか、読んでいてつまらなくはないけど、特にすごく面白いというわけでもなく。
なんだかちょっと残念な印象になってしまった。
とはいえ、恋愛は人が生きるうえでやっぱりなくてはならないものなんだろうし、
そもそも恋愛ってナニ?ってちょっと考えちゃったりしたわ。



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| 桂 望実 | 00:05 | comments(0) | trackbacks(0) |
ハタラクオトメ
評価:
桂 望実
幻冬舎
¥ 1,470
(2011-04)

コレ、何かの雑誌で連載されてるのをチラッと読んだ気がする。
タイトルどおり、アタシが割と好きな分野のお仕事モノです。
男女平等だなんだといいながらも、やはり主流はオトコたち。
そんな中で働くOLが、長い年月をかけてこびりついている不可思議なルールに立ち向かう。
やっぱりこういうのって、読んでて楽しくていい。

ごっつぁんと呼んでください。
初対面のときに自ら申し出て、明るいデブキャラを確立している北島サン。
だけど、そんな明るいキャラクターにたどり着くまでには、
ちょっと切ないストーリーもあったりして。
いじめられるのか、個性のひとつとするのか。

もちろんメインは、会社の中の人間関係。
女性社員だけの寄せ集めのプロジェクトチーム。
もともと彼女らはみんな仲良しこよしってわけじゃない。
営業の第一線で男性社員よりも優秀な成績をおさめている人や
かわいいんだけど、甘ったれた感じでちゃんと仕事できんの?的な人や。
とにかく暗い感じの人や。

だけど寄せ集めのチームだからこそ、
いろんな個性の人が集まっていて、
お互いに相手の良さを認めあったときに、チームはいい感じで動き出す。
ああ。あの感じ。ステキね。

会社の中のくだらないルールのせいで、企画がポシャリそうになったとき、
ごっつぁんがつぶやく。
OLのやる気をなくしているのは、上司のせいなのか、組織のせいなのか。
ものすごく分かるわぁ〜。

などと、やたらと同意しながら読み終えました。
桂サンは『県庁の星』のイメージがありすぎて、ちょっとカワイソウな気がする。
けど、今回も勇気付けられたり元気付けられたりする言葉がいくつもあった。
楽しかった。

内容(「BOOK」データベースより)
北島真也子、OL。157cm、100kgの愛くるしい体形ゆえ、人呼んで「ごっつぁん」―。
中堅時計メーカーに就職して5年が過ぎた彼女は、ひょんなことから「女性だけのプロジェクトチーム」のリーダーに。
任務は、新製品の開発。
部署を超えて集められた5人と必死に企画を立てるも、その良し悪しを判断される前に、よくわからない男社会のルールに邪魔される。
見栄、自慢、メンツ、根回し、派閥争い…。
働く女性にエールを送る、痛快長編小説。


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| 桂 望実 | 19:47 | comments(0) | trackbacks(0) |
嫌な女
評価:
桂 望実
光文社
---
(2010-12-16)

主人公は弁護士の徹子さん。
趣味といえば文房具集めというとても地味な女性。
数年スパンで、彼女の弁護士としてのシゴトぶりを描いている。
もちろん徹子さん目線で。

弁護士っていえばいろいろなクライアントからシゴト受けるんだろうけど、
この小説はただ一人のクライアントからの仕事だけが描かれている。
ということは、もちろん何度も同じ人が同じ弁護士に仕事を依頼しているということで。
そうそう何度も弁護士を使うような人って……。
そう。嫌な女なんです。

彼女は小谷夏子。
弁護士の徹子の親戚。遠縁の。だけど歳が近い。
徹子が記憶している夏子は、小学生のころ親戚の家で一緒になったときのものだけだった。
その家で徹子と夏子二人におそろいのステキなワンピースが用意されていた。
周りがほめたのを気に入らなくて、徹子のワンピースをズタズタにした夏子。
自分だけが注目を浴びたい女の子なのだった。
それ以来あってもない夏子から、突然シゴトの依頼を受ける徹子。

幼いころから一貫して「嫌な女」の夏子。
異性からはもてはやされるが、同姓から好かれることは皆無。
そんな夏子からの依頼は、どちらかといえば依頼人に非がありそうな感じ。
一つの仕事が終わったら、料金も支払わずに音沙汰ナシ。
別の場所で別のことで困ると、また徹子にシゴトを依頼してくる。

結婚詐欺や送り付け詐欺、結婚相談所詐欺などなど、自分の魅力を武器にありとあらゆることで生計を立てている夏子。
それらは限りなく黒に近いグレー。
っていうか弁護士の徹子が、真っ先に依頼人を疑う有様。
どれもが、それなりに決着をする。
相手が訴えを取り下げることもあったり、夏子に支払をすることもあったり。

弁護士のシゴトって、勝ち負けじゃないんだなぁって思った。
もちろん裁判になると勝訴ってぐらいだから勝ち負けになるんだろうけど。
たいがいの案件は、お互いがいちばん困らないような地点に落としどころを見つけることが大事なんだなって。
夏子さんって確かに嫌な女だけど、徹子さんにとっては、夏子が嫌な女じゃなくなるのはちょっとガッカリなんだろう。
読んでるアタシもそう思うし。

20代だった徹子先生も、夏子さんの事件のほか、いろんな事件に関わりながら60歳を過ぎるまで働いている。
この小説は、ある意味女の一生という見方もできる。
その間、弁護士として、人として、ある意味変わっていき、ある意味変わらずにいる徹子サン。
割とキライじゃないな。

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| 桂 望実 | 22:31 | comments(0) | trackbacks(0) |
WE LOVE ジジイ
評価:
桂 望実
文藝春秋
¥ 1,500
(2009-01)

なんか、こういうイイ人がやたら出てくるイイ話って、気軽に気分よく読めるからいいな。
っていうのがだいたいの感想かなぁ。
取り立てて深い何かを感じるわけではないけど、まぁ楽しく読めていいじゃないか。

都会でコピーライターをしていた男が、友人の自殺から逃げるように田舎暮らしをはじめる。
人とのかかわりをさけて、ひっそりと田舎で暮らそうとしていたのに、少しずつ地域の老人たちとのかかわりができてきてしまい、結局気づけば地域コミュニティのど真ん中に。
そしてそんな暮らしも悪くはないというオチかな。

田舎暮らしって、田舎に暮らしてない人は憧れるもんなんだろう。
なんか平和でよさそうとかいって。
そしてこの小説のように、その田舎にどっぷりと真ん中まで使ってしまえば、これもまた楽しいんだろう。
中途半端に田舎にかかわるから、面倒な気分になってしまうのかも。

しかしま、輪投げ大会で地域づくりとかって、バカバカしいけど、田舎の役人は下手したら本気で考えそうだから怖い。
ただ、この小説でもそうだけど、ソレを通じて田舎の人同士の関係が良くなるっていうのはいいことだ。
ここでは、田舎の町にぽつんとある工場で働く外国人労働者と、地元の老人たちとが仲良くなるという設定。

しかしこの小説、過疎問題とか、町村合併とか、高齢化問題とか、派遣労働者の問題とか、いろんなものテンコ盛り。
ちょっと欲張りすぎの感はあるけど、割とはみ出さずにまとまっていてよかった。
読んで元気になったり前向きになったりできるような小説は、やっぱり好き。

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| 桂 望実 | 13:03 | comments(0) | trackbacks(0) |
平等ゲーム
平等ゲーム
平等ゲーム
桂 望実

桂サンは、どうしても『県庁の星』のイメージ。
その後もいくつか出版なさってるんだけど、アタシにとってはやっぱり「県庁サン」かなぁ。
で、新作をそろそろ読んでみようかと手に取ったら、タイトルが『平等ゲーム』。
表紙はなんだろうな?島の風景かな?
それにタイトルは赤いドットで書かれていて、あれれ?まさか島でのサバイバルゲームみたいなのだったりして……。
などと想像をしたが、全くの見当違いだった。

2008年、誰かがこの国のやり方に不平等感を募らせ、瀬戸内海に浮かぶ島で独自の地域づくりを始めた。
その後数十年がたち、その島は平等の島として認知されていた。
島で暮らすにはお金は必要ない。すべてのものが平等に与えられる。
そしてここでは全てのことを島民全員の投票で決められる。
……非情に胡散臭い。なんかの宗教とかのコミューンとかみたい。

主人公はこの島で生まれ育った耕太郎、34歳。
競争というものを知らずに育った彼には、嫉妬とか悪意とか、そういった感情がない。
そんな感情に接したことがないために、想像すらできない。
いわゆるものすごくイイ人。

そんな彼が勧誘係という仕事のため本土に人に接することで、成長していくという話。
一見、誰もが憧れる平等社会という響き。
これに対峙するものとして競争社会というものがあって、これは確かに疲れる。
では、どっちがいいんだ??究極の選択ならどっちだ?
できればその中間ぐらいが一番暮らしやすいんじゃないのかなぁ。
ある程度平等。でもやっぱり頑張ったらそれなりの評価がほしいだろうし。
そういうのをじっくり考えさせてくれるような長編で、結構これは面白かったな。

主人公のその勧誘係という仕事は、この島に興味のある人がHPを訪れアンケートの中で島への移住を希望すると応えた人の中から、選ばれた人を調査し、島への移住を勧めるというもの。
彼自身、その島のことを理想郷だと信じて疑うことなく生きてきた。
そのせいで、本土の人たちと接する間になんだか違和感を感じている。

なんとなく絵を描くのが好きだった彼は本土で絵を書くことを頼まれる。
優劣をつけることのない島では、彼の絵も他の人の絵もすべて平等に扱われていた。
そのせいで、自分の絵に対する評価を受けたことがない彼は、自分でもその評価ができずにいる。
ただ、頼まれて応援したくて一生懸命がんばって書いた。
それを褒められ、喜ばれることに、ものすごい喜びを感じた。

方や、彼が絵を習うことになった大学の美術の講師が、勝手に彼の絵を展覧会に出した。
彼の絵は評価されたものの、最優秀賞というものには手が届かなかった。
そのことに対して彼はなんとも思わない。順位を付けることに興味がないから。
だけど彼の作品と比べられて勝ったというその最優秀の作品を目にしたときに、生まれてはじめての感情を抱く。
その絵は明らかに彼の絵よりも素晴らしいと彼には見えなかったから。
なぜ自分の絵より、この絵のほうが優れているということになったのか。……苛立ちとか嫉妬とか。

人間には本当にいろんな感情が溢れている。
綺麗な感情も汚い感情も。
だけども嫌な部分、悪意も含めてその人。
それらを含んだ相手を愛しく思えるようになりなさい。絵の先生に言われる。

結局彼は、島から出て暮らすことになる。
それは彼の本意ではなく、島民の投票による追放だった。
だけども彼はすでに理想だと思っていた島の社会にひずみを感じている。
ただ、そのひずみを悪だとしか考えられずにいた彼に、本土の人たちは教えてくれる。
理想社会は息苦しすぎやしないかと。
優劣をつけられることが、悪いだけじゃないという感情も自ら知ることができた。
一生懸命に頑張ったものに対して、それを評価されたときの達成感は、平等な社会では感じることができない。
なんだか前向きな感じの終わり方が好き。

格差社会という言葉がすっかり定着している日本。
それに対する憤懣は広がり、先の参院選では民主党が自民党を制した。
そしてこの冬には解散総選挙で長い自民党による政治が問い質されるなどと騒がれていたが、その騒ぎもすっかり下火になった。
こういう国政なんかを見ていると、格差ってなんだろうな?とか平等ってなんだろうな?ってつくづく悩む。
格差のない社会というものは確かに理想かもしれないけど、格差が全くない社会というのもどうなんだろう?
近年、こういうの、すごくよく考えるようになってしまって。
ワーキングプアとかワンコインワーカーとかの悲惨な実態を見聞きすれば、そりゃなんかおかしいって思う。
だけど、今ある格差をまったくないものにして、一から平等にって言い出すと、それもまた違うやろって思う。
ここで絵の先生が言っているように、社会を中心に考えてしまうから難しくなっちゃうんだろうな。
やっぱり人間って、自分が中心だから。そしてその次に大事なのが家族とか。そしてその周りの人たちがいて。
皆が良くなるためにはどうしたらいいかってところで、ようやく社会という言葉が出てくる。

……やっぱり難しい感じになってしまった。
だけどこの小説は、結構難しいことを提示しながらも、とても読みやすくて気持ちいい。

出版社 / 著者からの内容紹介
瀬戸内海に浮かぶ「鷹の島」。
そこでは1600人が、全員平等。
果たしてそこは楽園か、それとも……?
現代社会に蔓延する「平等幻想」をテーマに描く傑作エンターテインメント長編。

商品の詳細
単行本: 346ページ
出版社: 幻冬舎 (2008/08)
ISBN-10: 4344015495
ISBN-13: 978-4344015494
発売日: 2008/08

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| 桂 望実 | 15:22 | comments(0) | trackbacks(1) |
明日この手を放しても
明日この手を放しても
桂 望実

なんだろ?すごく消化不良っていう印象が残る読後感。
桂サンって,確か「県庁の星」の人じゃなかったっけ?
こんな作風っけ?
もっと分かりやすい感じじゃなかったっけ?

主人公が属するこの家族のあまりの不幸さにはリアリティを感じられなくて。
まず二十歳を前に娘が病気により失明する。全盲になり引きこもる娘。
そして家族の太陽のような存在だった母が交通事故で死亡。
生活能力の低い漫画家の父と、自分勝手な兄と全盲の妹との生活。

引きこもり生活を引退した娘は、全盲の女の子を主人公にしたマンガの原作者として、父と一緒に仕事を始める。
娘が原作を作り、父が絵を描く。
そうこうしているうちに、この父が突然フラリといなくなる。
残されたのは気の合わない兄妹。
この二人が、なんだかだいいながら認め合っていく様子を描いている。

が、なんせエピソードがどれも中途半端で、アタシには納得できない。
後は読者の想像にお任せします的な考えがあってのことかもしれないけど、作者がどうにも面倒になって考えるのやめちゃったように見えてしまう。
なんて穿った見方をするアタシって、嫌な読者ですこと。

しかし。
結局あの編集者の西尾サンとやらは、やっぱり悪い人のままなのか?
そしてこの全盲の妹が一人暮らしをしようっていう結末も意味が分からない。
っていうか父はどうした?父は?
家出なのか?事件か事故か?生きてるのか、死んでるのか?
そんな感じで読み終えてしまったので、あまり気分がよくないです。

商品の詳細
19歳で途中失明して夢を失った凛子。
向日葵のようだった母の死に続き、寡黙だけど優しい漫画家の父までいきなり「消えて」しまった。
残ったのは、自分のことに精一杯で気配りの足りない兄・真司だけ。
その日から「世界中の誰よりも気が合わない二人」だけの生活が始まった!
一番近くにいても誰より遠い二人の未来に待っているのは…。
家族の愛がぎっしり詰まったハートフルな長編小説。
単行本: 253ページ
出版社: 新潮社 (2007/06)
ISBN-10: 4103033517
ISBN-13: 978-4103033516
発売日: 2007/06

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| 桂 望実 | 21:27 | comments(0) | trackbacks(1) |
RUN!RUN!RUN!
RUN!RUN!RUN!
RUN!RUN!RUN!
桂 望実

めちゃくちゃ感じの悪い主人公。
彼が人間らしくなっていくきっかけを描いた小説。
読後感はやっぱり悪くはない。さわやか系。
読み終えて、表紙に描かれた曲がったシューズを見て、なるほど。

子どものころから走るのが速く、そのまま陸上競技にどっぷりとつかり、おそろしいほどの自信家に育った次男、優。
優が大学生に入り陸上競技部に所属したのは、あくまで通過点として。
周りの学生たちとの温度差がありすぎ、それをつくろうこともできない。
優にとっての陸上競技はあくまでも個人競技。仲間なんていらない。
心の底から本当にそう思っていたはずの彼は、あるできごとをきっかけに別の自分に気づく。
その名前を聞くだけで周りの部員たちが浮き足立つ箱根駅伝。

エースであるはずの彼だが、自らの出生の秘密を知ったことから出走を拒む。
それに対してコーチは、補欠選手のサポートをさせることで了解した。
優に言わせればダメダメランナーの岩本クン。
彼のサポートをし、一緒にその大会を超えることで、優の心は大きく変わる。

やっぱ仲間って大事よね〜って感じの、能天気な話なんだけど、意外と裏では重いテーマも取り扱っている。
そのために兄との関係や父母との確執も描かなくてはならなかったんだろうけど、いっそのことアツイ感じのまんまでいっちゃってもよかったのかも。
そしてこの書き方。最初と最後は現在、あとは回顧シーンってことなんだろうけど、このやり方の必要がどのぐらいあるのかなぁと。
なんか最後はなんだかなぁ。もうちょっと含ませるとか逆にさらっとやっちゃうとかしないと、なんとなく説明じみてて面白くない感じかな。

とはいえ、まぁなんといっても読みやすくて、ちょっといい感じの心地よさで読み終えることができて、いい小説。

内容
目標はオリンピックの金メダル。箱根駅伝は通過点。仲間なんか必要ないはずだった…。アスリートとして最高の資質を持つ主人公が知った事実とは? 箱根駅伝に懸ける仲間と走るうちに、閉じかけていた世界が開いていく。

単行本: 300ページ
出版社: 文藝春秋 (2006/11)
ASIN: 4163254501




| 桂 望実 | 19:54 | comments(0) | trackbacks(2) |
Lady,GO
Lady,GO
Lady,GO
桂 望実

普通に面白かった。
なんか前向きな感じがイイ。
お水の花道とかってドラマが昔あったけど、しかもソレみたことないんだけど、タイトル的にそんな感じ?
地味ではっきりしなくてウジウジしてそうな女の子が、まったく向いてないと思いながらキャバクラで働き始める。
そこで彼女が周りの人たちに助けられながら、どんどんと変わっていって、気持ちも前向きになっていって。
なんか前へ向かう雰囲気って、読んでいて気持ちいいじゃないの。

人って誰でも前向きな面も持っているけど、ぐだぐだと言い訳をつけて後退しちゃう感じの面も持ってる。
アタシもそう。
バカバカしいかもしれないけど、それでも前向いて、ちょっとでも自分のこと好きになりたいなと思うし。

ただ、確かにこの小説はハナシがデキすぎ。
周りにこんなにイイ人ばっかりいないって。
などと突っ込みつつ、それでもやっぱり気持ちよく読ませていただいた。
成功は努力しだい。
気持ちのこもったやさしい嘘はアリ。
素直なのがイチバン。
一日に「ありがとう」を何回言ったのか数えてみる。

……日ごろから思い返したいと思うことがいくつもあった。

内容(「BOOK」データベースより)
こんな私が、キャバクラ嬢!?席に座って、まず挨拶(第一印象)。水割り作って話を聞いて(聞き上手)、無口な客には話を振って(話し上手)。客との会話は忘れないようメモを取り(顧客管理)、送るメールは返信が来るよう工夫を凝らす(営業努力)―。かわいくないし、ネクラだし、上手に嘘もつけないし…できるわけないよ、こんな私に。25万部の大ベストセラー『県庁の星』の著者、渾身の傑作長篇。

内容(「MARC」データベースより)
自分のことを好きになれない派遣会社勤務の南玲奈は、No.1キャバクラ嬢の美香にスカウトされた。かわいくないし、ネクラだし、上手に嘘もつけないし…。こんな私がキャバクラ嬢!? 「県庁の星」の著者、渾身の長編。

単行本: 403ページ
出版社: 幻冬舎 (2006/07)
ASIN: 4344011953


| 桂 望実 | 13:12 | comments(0) | trackbacks(2) |


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