アタシが読んだ本のことなどをさらさらと……



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沈黙の町で
評価:
奥田英朗
朝日新聞出版
¥ 1,890
(2013-02-07)

中学2年生の男子生徒が学校内で亡くなった。
屋根からの転落はいじめによる自殺か、事故か。
小さな田舎町で起きた事件。

決して読んでいて楽しい小説ではない。
むしろ読後感は最悪に近い。
琵琶湖県のあの事件を連想してしまううえ、
この小説は、それに近い時期に新聞に連載されていたらしい。
当時は結構な騒動だったんだろうな〜。

教師が学校の見回り中に生徒が倒れているのを発見するシーンから始まる。
そしてその後の様子と、事件発生前の様子とが交互に描かれる。
いじめは確かにあった。
だが、この小説ではいじめられる側にも問題があるという方向。
勇気ある描き方。

何より怖いのが、出てくる人たちに特別変わった人はいないということ。
ごく普通の人たち、ごく普通の生徒たち、普通の教師たち。
強気な人、弱気な人、過保護、保身、攻撃的……。
いろんな性格の人が出てくるが、飛びぬけて普通じゃない人ではない。
それでもこういうことが起き得るということが、なんだか地味に怖いなと思った。

この小説の中で教師が「中学生が一番難しい」とこぼすシーンがあった。
子どもの残虐性を残しながら、大人の分別がついてたりついてなかったり。
今も昔も、この年代の子供たちは不安定で難しいのは変わらないんだろう。
だけど、アタシたちのころとは、何かが違うように思える。
今の子どもたちってタイヘンだな〜と思う。

だけどひとつ最後まで気になったのが、当事者の目線がないこと。
事件が起こる前の様子を、いろんな生徒の目背で描いているが、
亡くなった子、いじめられていた子の目線からの描写がまったくない。
なんでこんなに、いじめてくださいとばかりの態度をとるんだろうと
読みながら首をひねってしまった。

この小説をものすごく乱暴に単純化すると
いじめる側にも一部は理由もきっかけもあって、
いじめられる側にも問題がある。
子どもたちは変なところで口を閉ざし、
大人たちは自分や我が子のことばかりを中心に考える。
そして小さな町では、暮らしにくさばかりが残ってしまう。
なんともやりきれない話。
それなのに、これだけしっかり読ませるというのは
やっぱり奥田さんの力量なのかなと思う。

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| 奥田 英朗 | 12:04 | comments(0) | trackbacks(0) |
噂の女
評価:
奥田 英朗
新潮社
¥ 1,575
(2012-11-30)

これはなかなか面白かった。
この噂の女、美幸にはモデルがあるそう。
実在した保険金詐欺殺人の犯人の木嶋とかいう女性らしい。
しかし劇的な人生だ。

中学時代は地味だったという噂。
その後、一転派手になったという噂。
外車で男が学校まで迎えに来るという噂。
ある社長の愛人だったという噂。
その社長が突然死したという噂。

いろんな人からみた彼女。
いろんな噂があって、いろんなことが起きる。
でもどの話も、あえて結末が書かれていない。
で、どうなったんだろうって気になりながらも、
分からないまま月日が流れて、彼女の周りではまた次のできごとが起きる。

それにしても周りの人たちをうまく味方につけ、
ヘタに嫌われるぎることなく生き抜く女。
強くてしたたかで、めちゃくちゃ悪人なのに、なんとなくあこがれるような。




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| 奥田 英朗 | 19:48 | comments(0) | trackbacks(0) |
どちらとも言えません
久しぶりに奥田サンでも読んでみたいな〜と。
ただ、手にとってすぐにエッセイ集であることに気づきガックリ。
まぁたまにはエッセイもいいんじゃないのかなって。

で、中身といえば、スポーツに関するエッセイ。
雑誌に連載されていたものなんだろう。
結構オモシロイ。

奥田サンっぽい切り口がイイ。
相撲界のイザコザからサッカーワールドカップ、オリンピックから得意のプロ野球まで。
いろんなスポーツについて、語られています。

あまりにさらさらと読めるので、お風呂の中で読みきってしまった。
ただ、かなり時勢のできごとを描いているものが多いので、
こうして時期はずれに読んでもなぁ……。
まぁ、「あ、そういうのあったな〜」などと思い返しながら読んだので、アタシとしては悪くはなかったけど。

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| 奥田 英朗 | 18:50 | comments(0) | trackbacks(0) |
我が家の問題
評価:
奥田 英朗
集英社
¥ 1,470
(2011-07-05)

これは久しぶりにアタシが好きな奥田さんの作風ではないか。
一気に読んでしまった。
家族の中の問題って、意外とみんな分からないもの。

完璧すぎる妻のせいで帰宅拒否症になった新婚の夫。
里帰りのしきたりに戸惑う新婚夫婦…。
1 甘い生活?
2 ハズバンド
3 絵里のエイプリル
4 夫とUFO
5 里帰り
6 妻とマラソン
という6つの短編でなっている一冊。

どれもがそんなにオオゴトではなくて、他人からみれば些細なことかもしれない。
それでもやっぱりその家族にとっては一大事で……。
そんな状況を奥田さんらしく、あったかくちょっとユーモアも交えて描いている。

最終編の妻とマラソンは、妻の孤独と家族の愛がテーマかな。
ご近所づきあい、子どもを介した付き合いなど、目に見えない妻の付き合いって意外とタイヘン。
それをすんなりとうまくこなしてきた妻だが、夫がちょっとした有名な作家となって、
周囲の家庭よりちょっと裕福な家庭になってしまったことで、状況が変わってしまった。
妻たちはお互いに、お互いの生活レベルに敏感で、ちょっと外れた家庭は仲間とみなさない。
子どもも手が離れ、友達もいない。夫と二人暮らしの家事はそんなに時間をとるでもなく。
この小説のいいところは、そんな妻の状況と様子に、きちんと夫が気づいていること。
そんな折、彼女はマラソンに目覚める。
最初は近所の土手をちょっと走るぐらいだったのが、だんだんと距離が伸び、走る時間が長くなり……。
とうとう妻は東京マラソンに挑戦する。
あぁ。ベタだけど、こういうあったかくて前向きなハナシはステキね。

奥田サン。こういうの、おねがいします。
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| 奥田 英朗 | 09:27 | comments(0) | trackbacks(0) |
純平、考え直せ
評価:
奥田 英朗
光文社
¥ 1,470
(2011-01-20)

奥田英朗サン、ひっさびさの新刊ではないか??
ていうか、いつ出てたんだろう?
という勢いで読み始めた。

元々田舎の暴走族をしていたが
今は歌舞伎町のヤクザの下っ端の純平。
自らの兄貴に憧れ、歌舞伎町に居心地の良さを感じている純平。
そんな彼に、鉄砲玉という重大な任務が託される。

その決行の日までの3日間。
彼が新しく出会ったり、元からの知人だったり友人だったりと過ごす。
そのたった3日間だけど、なんでもありの3日間。

周りのたくさんの人に愛されている純平。
だけど自分はひとりぼっちだと思っている。
そんな彼が、決行の日を前に過ごす短い期間で、
自分がどれだけ周りから大事にされているのかに気づく。

そうこうしているうちに、読んでるこっちのほうとしてもタイトルに影響されてくる。
なんせ「考え直せ!」っていうんだからねぇ。
なのになんだこの終わり方は……。
ここまできたんだからもう、勢いでハッピーエンドでいいんじゃないのか?

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| 奥田 英朗 | 22:52 | comments(0) | trackbacks(0) |
オリンピックの身代金
オリンピックの身代金
オリンピックの身代金
奥田 英朗

年末からチョコチョコと読んだのが、奥田サンの社会派小説。
今の日本には無い勢いを感じさせる昭和。
その昭和の中でもとりわけ勢いがあった東京オリンピックを控えた日本が舞台。
「もはや戦後ではない」という言葉どおり、破竹の勢いで奇麗になっていく東京。
その一方、地方は見捨てられ、その地方から出てきて東京で働く人たちの生活は楽ではない。
国中が浮き足立って、誰もがそれを歓迎するオリンピックというイベント。
今の日本では、なかなか想像できない。

そういう時代を背景に、人一倍頭が良くて東大の大学院に在籍する島崎国夫。
彼の実家は秋田の田舎町。すなわち見捨てられた土地。
そして家族は皆貧しく暮らしている。
オリンピック需要による人夫として出稼ぎに出ていた兄が亡くなった。
そして現場で働く人たちを目の当たりにし、彼はなぜか兄の後を追うように工事現場で働くようになる。
そうしているうちに、この日本の勢い。オリンピックを錦の御旗にして不平等な資本主義へと進む日本に対する嫌悪感が募る。
そして彼は国を相手に、オリンピックを人質にした犯罪を考え付く。

時代背景が事細かに描かれていて、リアルタイムで知らなくても映像が浮かぶよう。
そして国夫と彼の相棒となる村田との関係や、工事現場の人たちとの関係なんかも、なんか深くて重いものとそして時代を感じさせる。

今の日本でも低所得者層が激増して、コレと似たような状況が起こっている。
ブルジョワジーとかプロレタリアートとか。
オリンピック需要により多くの日本人が幸せを実感すると共に、その格差を感じている。
それでも虐げられている人たちは、そのことを知ってはいても声に出して文句を言うでもなく諦めている。

盗んだダイナマイトで国を脅す犯人。
オリンピックを中止しろという警告と共に関係施設を爆破する。
命がけでオリンピックを成功させたい国。
犯人が爆発を起こしても、一切マスコミは流出しない。
不安な要素を国民に知らせたくない国の方針。
そして、警察と公安との鍔迫り合い。
いろんな様相が絡んでいて、なかなか面白い。

犯人と警察、公安との接触シーンが何度かあって、これはなかなか楽しませてもらった。
こういうのって、映像化したら結構面白いのかもしれないな〜。
ただ、オリンピックの中止を訴えていた犯人が最終的には8千万円を要求する。
後から考えると、なんだかどうなん?って気がしてきた。
読んでいるうちは何の疑問も抱かなかったのは、それなりにキモチの動きがうまく描かれていたせいなんだろうな。

ソレと、最後。
最終的に犯人がお金の引渡しに選んだのはオリンピックの開会式が行われるその日の会場。
ここでの大捕物は、思ったよりも地味な感じがした。
そしてこの結末はなんだか少し読んでいて消化不良気味。

とはいえ、これって読みながら妙にリアリティを感じた。
昭和の臭いはプンプン漂っているにもかかわらず、どこか今の日本のお話のような気がしたりして。

東京オリンピックっていうのは、やはりこの時代を生きた人にとっては、なにかとても特別なものなんだろうなぁ。


内容(「BOOK」データベースより)
昭和39年夏。
10月に開催されるオリンピックに向け、世界に冠たる大都市に変貌を遂げつつある首都・東京。この戦後最大のイベントの成功を望まない国民は誰一人としていない。
そんな気運が高まるなか、警察を狙った爆破事件が発生。
同時に「東京オリンピックを妨害する」という脅迫状が当局に届けられた!
しかし、この事件は国民に知らされることがなかった。
警視庁の刑事たちが極秘裏に事件を追うと、一人の東大生の存在が捜査線上に浮かぶ…。「昭和」が最も熱を帯びていた時代を、圧倒的スケールと緻密な描写で描ききる、エンタテインメント巨編。

商品の詳細
単行本: 524ページ
出版社: 角川グループパブリッシング (2008/11/28)
ISBN-10: 4048738992
ISBN-13: 978-4048738996
発売日: 2008/11/28

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| 奥田 英朗 | 14:03 | comments(1) | trackbacks(3) |
邪魔
邪魔
邪魔
奥田 英朗

コレは結構、アタシの好きな感じのもの。
普通に暮らす小市民が、泥沼式にドツボにはまっていく様子が恐ろしい。
この人の作品でなんだっけ?最悪だっけ?あれと似た感じの色合いの小説ね。

hとても律儀ないい刑事だけど、妻を亡くして以来不眠症を付き合い続けている警部補、九野さん。
その夜の彼の任務は同僚の服務規程違反を挙げるための尾行。
そうとは知らずに彼をオヤジ狩りの標的にしてしまう高校生祐輔とそのツレ。
彼ら3人は九野に襲い掛かり、逆に骨折をさせられて退散する。

その後起きた火事。
会社が焼けて、放火の疑いがあるという。
その捜査を行うことになった九野。
彼が怪しんだのは、その火事の第一発見者である及川氏。
その及川氏の妻である恭子が、雪だるま式に不幸に見舞われていく様子がリアル。

郊外に一戸建ての家を建て、2人の子どもたちと平凡に楽しく暮らしている家族。
昼間は近所のスーパーにパートに出かけ、庭に花壇を作ることを楽しみにしている。
自社の火事を発見し、消火しようとしてやけどを負ってしまった夫。
そこへ刑事が尋ねてくる。次々と不穏なことを聞かれているうち、ふと夫が疑われていることに気づく。
そんな彼が自らその火を放っただなんて、想像できない……。
そう思っていたはずなのに、なんだか彼の性格を長年の間の言動を思い返して、分かってしまう。

あぁ、なんて愚かなんだろう。不幸なんだろう。
そういえば結婚式のときに……。親戚のお葬式のときに……。
彼の手癖の悪さを思い返し、それと今回の事件を結びつけて愕然とする主婦。
自分の家庭はどうなってしまうのか。子どもたちはどうなってしまうのか。
不安に駆られて息をするのも精一杯だった彼女は決心する。
どんなことがあっても自分が守って見せると。

女って怖いねぇ〜。強いねぇ〜。
いや、マジで。
アタシもここのところ反省しきり。
でもねぇ。夫の言動の全てに納得し、反感を持たないだなんてありえないよねぇ。
結婚前に気づいて取りやめるのか、それとも結婚後に気づいてそれを質すのか。
どっちもなんとなくできないまま日々が過ぎてしまい、修復不可能な状態になってしまう。
その後にこれをなんとかしようとすると、力いっぱい大変なのよねぇ。

あ。余談でした。
それよりこの小説、二段組になってて結構なボリューム。
この量のせいで最初はなんだか気が進まなかったんだけど、読み始めると止まらない。
警察という小さい社会の中の正義と常識とか、将来に夢も希望もないけどワルにもなりきれない高校生とか、闘争自体が好きな市民団体とか。
いろんなものが少しずつ少しずつ影響しあってて、それがどこかで繋がってて。
こういう形の小説、すきなのよね。
ただ問題はラスト。
なんだろうか。バタバタってなってなんだか丸く収まったって感じ?
っていうかエイヤーって勢いで収めてしまった感じかな。
だってさ。なにって九野さんが慕って仕方がない亡妻の母が実は死んでいるというあのクダリはいったいどうなったのよ?
替え玉ってこと?詐欺に遭い続けてるってこと?
ちょっと〜。はっきりさせてくれないと眠れないでしょ〜って感じ。
ということでラスト、もうちょっと丁寧に書いてもらえるとうれしかったな。きっと。


内容(「MARC」データベースより)
始まりは、小さな放火事件に過ぎなかった。
似たような人々が肩を寄せ合って暮らす都下の町。
手に入れたささやかな幸福を守るためなら、どんなことだってやる。
現実逃避の執念が暴走するクライムノベル。

単行本: 454ページ
出版社: 講談社 (2001/04)
ISBN-10: 4062097966
ISBN-13: 978-4062097963
発売日: 2001/04


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| 奥田 英朗 | 21:51 | comments(0) | trackbacks(0) |
ウランバーナの森
ウランバーナの森
ウランバーナの森
奥田 英朗


軽井沢の別荘で過ごしていた主人公のジョンが遭遇する不思議なオハナシ。
ジョンって、もしかしたら……表紙の横顔もまさに……。
と、ワクワクしながら読み始めた。
やっぱりそうなのだ。モデルはリバプールの彼に違いない。

この小説の中で彼は便秘と格闘する。
とにかく死闘を繰り返すのだが、敵でるところの便秘は恐ろしく強い。
そのうらには実は……。

やっぱりファンタジー系はアタシ、あんまり得意じゃないな。
けど、そのわりには意外と楽しく読めた。
その問題の背景にある人間的なドロドロとしたものとか、
小さいことでもずっと心に引っかかっているものとか、
そういったものの辛さがうまく描かれているし。

家政婦のタオさんが結構魅力的だわ。
日本語と英語とのかみ合わないはずなのに通じている会話なんかを想像して、ちょっとうれしい気持ちになったり。
このモデルである本物のジョンも、こうやってここで過ごしたんだろうかな、などと思いをはせてみたり。

ところで、盂蘭盆会っていうじゃない。
あれってサンスクリット語で苦しみという意味のウランバーナからきているんだそうだ。
知らなかった〜。

出版社/著者からの内容紹介
あの夏、軽井沢で、ジョンは幽霊と便秘に襲われた!注目の新人が描く愛と感動のファンタジー。
悲劇の暗殺、その1年前。世紀のポップスターが遭遇した再生への神秘体験。
奥田英朗は赫(かがや)かしい才能の持ち主である。この美しい処女作『ウランバーナの森』が、読者の書棚の誇るべき記念の1冊となることはそう遠い先ではあるまい。――浅田次郎


単行本: 245ページ
出版社: 講談社 (1997/08)
ISBN-10: 4062087596
ISBN-13: 978-4062087599




| 奥田 英朗 | 14:32 | comments(0) | trackbacks(0) |
東京物語
東京物語
東京物語
奥田 英朗

名古屋から東京に出たいという思いだけで、上京した男の子。
彼がいろんな人と出会い、いろんな出来事を経て大人になっていく様子を描いた小説。
なんともまぁ、読みやすい、楽しい小説。

頑固だったり、ちょっと優柔不断なところがあったり、
ヘンに自信家だったり、そして落ち込んだり。
普通の人間が普通に暮らしていても、日々いろんなことが起きる。
そんな中の一人の様子を切り取ったような……。

何がおきるっていうような話でもないけど、ちょっと笑ったり、懐かしんだりできてよかった。

出版社/著者からの内容紹介
名古屋から上京した久雄は、駆け出しのコピーライター。気難しいクライアント、生意気なデザイナー、そして恋人。様々な人々にもまれ成長する青年の姿を、80年代の東京を舞台に描く傑作青春小説。

内容(「BOOK」データベースより)
1978年4月。田村久雄の風景は、18歳から色づきはじめる。「最悪」「邪魔」の著者が描く80年代グラフィティ。

単行本: 342ページ
出版社: 集英社 (2001/10)
ISBN-10: 4087745198
ISBN-13: 978-4087745191




| 奥田 英朗 | 18:15 | comments(1) | trackbacks(1) |
最悪
最悪
最悪
奥田 英朗


本当に最悪だ、コレ。
一見、ばらばらで何のつながりもないような人たちの日常。
その日常の中で、それぞれが些細なことでアンラッキーをつかんでしまう。
まぁ、よくあることかもしれない。
ところがそれがまぁ、なにかの引力にでもひきつけられるかのように集まってしまう。

些細な不幸。だけどそれが続きに続く状態を最悪という。
そんな辞書に書くような説明を思い浮かべてしまうような、とにかく最悪な小説。
そしてそんな最悪な人たちが、なぜかまた集まってしまう。
これも不幸の引力のせいなのか、それはそれはもう最悪。

読んでいる途中で、あまりの運の悪さ、タイミングの悪さ、その不幸さに、腹立たしくてイラつくほど。
だけどそれがあまりに重なると、悲愴を通り越してなんだかもう笑うしかないのかなぁって。
そしてもう逃げ出すしかないどうにもならないと思えるような状態を抜けた後、嫌なことがたくさん待っているものの、やっぱり人は普通に生きていかなくちゃならないし、生きていけるものなんだなぁって、やけに感心したりして。

一見、奥田さんらしいっていうようには見えなかったんだけど、このスピード感と展開のうまさはやっぱり彼らしいのかもしれない。
イライラして最悪だったけど、面白かった。

出版社/著者からの内容紹介
なぜ人は平凡な日常から堕ちていくのか?
犯罪に追いつめられる人間の心理を驚嘆の筆力であますところなく描く1999年の話題作。
零細工場主と恐喝(カツアゲ)常習者が「人生の敗け組」という運命に唾を吐いた。
とてつもない新人が放つ比類なき犯罪小説。
その町には幸と不幸の見えない境界線がひかれている。
事業拡大を目論んだ鉄工所主・川谷を襲うウラ目ウラ目の不幸の連続。
町のチンピラの和也が乗りこんだのは、
終わりのない落ちるばかりのジェットコースター。
「損する側のままで終わりたくない!」
追いつめられた男たちが出遭い、1本の導火線に火が点いた。

内容(「BOOK」データベースより)
その町には幸と不幸の見えない境界線がひかれている。事業拡大を目論んだ鉄工所主・川谷を襲うウラ目ウラ目の不幸の連続。町のチンピラの和也が乗りこんだのは、終わりのない落ちるばかりのジェットコースター。「損する側のままで終わりたくない!」追いつめられた男たちが出遭い、1本の導火線に火が点いた。

単行本: 397ページ
出版社: 講談社 (1999/02)
ISBN-10: 4062092980
ISBN-13: 978-4062092982



| 奥田 英朗 | 14:25 | comments(0) | trackbacks(0) |


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